写真展「 Zoo (海外編)」 テーマ 作品解説・パネル

動物の消えた動物園・・・世界の動物園を巡って、檻、堀で囲まれた岩山、ガラス多用の最新施設など、動物の居ない時を待って撮影した写真です。デジタル処理で簡単に動物を消すことも出来ますが、実写にこだわりました。動物の不在によって「動物園という装置」の本質が浮かび上がることをねらっています。

  近代以前にも中国やオーストリアの皇帝が珍しい動物を集め、展示したということが有りましたが、現代の動物園の起源はイギリスのロンドン動物園と言われています。

 ロンドン動物園は大英帝国の植民地から珍しい動物を集め研究するという目的で始まりました。ヨーロッパ近代の博物学という植民地主義的眼差しを展示する装置でした。大英帝国に負けじと、フランス、ドイツでも動物園を作り、近代国家なら動物園を持たなければとアメリカや日本も、そして現代では、世界各国で動物園の無い国はないでしょう。

 始めは研究者、ブルジュア階級の会員のための目的であったものが、大衆に入場料を取って見せるというものに変わり。それに伴って展示のしかたにも工夫がなされ、観るという欲望の肥大化への先駆けになって来ました。 

 動物園の起源と変遷のなかに近代の人間と動物の関係が表されています。動物は太古から人間がすべてを見ることが出来ない世界に生きていました。近代人は動物をどんどん可視的な領域に組み入れ、動物の世界は狭められ消滅してきました。

 動物園は動物の世界が消滅して来たのを記録するもの、あるいは既に死滅してしまった事のモニュメントの様に見えます。 1998年「Zoo」展では日本国内の動物園を取材した写真でまとめました。当初から世界の動物園を撮らないと終わらないと考えていました。

 動物園発祥の西ヨーロッパから、 東及び北ヨーロッパ、 アメリカ合衆国、中南米、 アジア をブロックごとに廻り、総計28カ国、67動物園を巡りました。

 先の「国内編」では銀塩カラープリント11X14インチまでは自家プロセッサーで出来ましたが、大伸ばしは現像所に外注し、自分で出来ない不満が残りました。

 全紙ぐらいの伸ばしを考えて6X7ネガカラーで撮影してきましたが。当時、インクジェットでのプリントは考えていませんでした。その後の顔料系プリンタの進歩で、銀塩に劣らないかそれ以上のクオリティーと耐・退色性能が出せるようになって来ました。

 手持ちのフラットベットスキャナでも1m幅ロール紙に充分なデータが取れるようになったので、エプソン「プライベートラボ」を借りて自らプリントすることにしました。

 大型プリンターが紙をゆっくりと刷りだして来る瞬間は、暗室で印画紙に像が浮かび上って来る時と同じ感動が有りました。

 Webでは味合えない、インクがのった紙の物質感も、ご鑑賞下さい。




展示

エプソンイメージングギャラリー      エプサイト

 

1118mmX1400mm

インクジェットプリント

(B0 ノビ・サイズ相当)

14枚

 

1600mmX3200mm

インクジェットプリント

1枚